家の片づけをしていたら、古い写真が出てきた。
少し色あせた集合写真には、若い頃の祖父母らしき人たちが写っている。
隣にいるのは、誰だろう。
親戚なのだろうか。それとも、祖父母の兄弟姉妹なのだろうか。
子どもの頃には何度も会っていたはずなのに、名前が思い出せない人もいる。
「そういえば、祖父には何人きょうだいがいたんだろう」
そんな小さな疑問から、家族の歴史に関心を持つことがあります。
しかし、いざ家系図を作ろうと思っても、何から調べればよいのかわからない。
戸籍を取った方がいいのか。親戚に聞けばいいのか。そもそも、何世代まで調べれば家系図になるのか。
難しそうに感じるかもしれませんが、最初から何百年もさかのぼる必要はありません。
家系図を初めて作るなら、自分・両親・祖父母の3世代から始めるのがおすすめです。家族の名前と続柄を整理し、親子や夫婦を線で結び、わからない部分だけを家族への聞き取りや戸籍で確認していきます。
紙とペンがあれば、今日から始めることができます。
この記事では、初心者でも迷わない家系図の書き方から、戸籍を使った先祖の調べ方、古い資料の整理方法まで、順番に解説します。
家系図とは、親子や夫婦などのつながりを、世代ごとに図で表したものです。
一般的には、祖父母や曾祖父母など古い世代を上に、子どもや孫など新しい世代を下に配置します。
そこに名前、生年、没年、婚姻関係などの情報を書き加えていきます。
例えば、祖父と祖母を横線で結び、その下に父親を配置する。母方の祖父母から母親へ線をつなぎ、父と母を結んだ下に自分を書く。
それだけでも、立派な3世代の家系図になります。
家系図には、調べる目的に応じてさまざまな形式があります。
先祖の名前や続柄をたどりたい場合は、親族関係を中心に整理した家系図が適しています。
一方、家族の関係性や、家庭内で起きた出来事なども整理したい場合には、家族支援の分野で用いられる「ジェノグラム」という方法もあります。
最初から複雑な記号を覚える必要はありません。
まずは「誰と誰が、どのようにつながっているのか」がわかることを目標にしましょう。
初めて作る場合は、次の範囲から始めると整理しやすくなります。
| 世代 | 記入する人 |
|---|---|
| 第1世代 | 父方の祖父母、母方の祖父母 |
| 第2世代 | 父親、母親、必要に応じて叔父・叔母 |
| 第3世代 | 自分、兄弟姉妹、必要に応じて配偶者・子ども |
祖父母4人、両親2人、自分1人の合計7人から始めるだけでも、基本的な家系図が作れます。
きょうだいや親族は、あとから追加して構いません。

必要なのは、最初から立派な家系図ソフトを購入することではありません。
まずは、A4またはA3の紙、鉛筆、消しゴムを用意してみてください。
名前や続柄は、調べていく途中で訂正することがあります。そのため、最初は書き直せる方法が便利です。
あわせて、次のような資料があれば手元に置いておきます。
すべてそろっていなくても問題ありません。
むしろ、家系図を作り始めてから、どの情報が足りないのかに気づくことの方が多いものです。
白い紙を横向きに置き、下の方に自分の名前を書いてみてください。
その上に父親と母親の名前を書きます。
結婚や離婚、再婚など、家族の事情によって構成が異なる場合には、実際の関係に合わせて記録します。
この段階で正確な生年月日がわからなくても構いません。
わからない項目には「不明」と書いておきます。
大切なのは、想像で名前や日付を埋めないことです。
次に、父親の上に父方の祖父母、母親の上に母方の祖父母を書きます。
父方と母方を分けて配置すると、あとから先祖をさかのぼるときに整理しやすくなります。
名前がわかる人だけで構いません。
例えば、母方の祖父の名前がわからないなら、その部分は空欄にしておきます。
親族の名前がどうしても思い出せない場合には、家族に聞いてみることもできます。
「おじいちゃんには、何人きょうだいがいたの?」
「おばあちゃんは、どこで生まれたの?」
そんな会話から、これまで知らなかった親族のことがわかる場合があります。
ただし、家族の事情によっては、話したくない内容もあるでしょう。
調べることより、相手の意思を尊重することを優先してください。
人物を書き終えたら、それぞれを線で結んでいきます。
簡単な家系図であれば、夫婦を横線、親子を縦線でつなぐ方法で十分です。
ジェノグラムでは、一般的に男性を四角、女性を丸で表す表記が使われます。
ただし、一般家庭用の家系図には唯一の全国共通書式があるわけではありません。
名前を四角い枠で囲み、続柄を添えるだけでも構いません。
離婚や再婚、養子縁組などがある場合は、区別できるように線の種類を変えたり、注記を加えたりします。
専門的な用途では、記号の意味を統一する必要がありますが、家族の記録として作る場合は、凡例を付けて誰でも理解できるようにしておけば十分です。
基本の家系図が完成したら、名前や生年月日、婚姻関係などを確認していきます。
親族から聞いた話を追加するときには、誰から、いつ聞いたのかを記録しておくと便利です。
戸籍から確認した情報なら、どの戸籍に書かれていたのかをメモしておきます。
後から別の情報が見つかった場合にも、整理しやすくなります。

ここまでできれば、基本的な3世代の家系図は完成です。
次は、さらに正確に調べたい場合の方法を紹介します。
家系図を作るとき、家族の記憶だけでは名前や年月日がわからないことがあります。
そんな場合に役立つのが戸籍です。
戸籍には、出生や婚姻、親子関係など、法律上の身分関係が記録されています。
ただし、現在の戸籍だけで、すべての先祖の情報を確認できるとは限りません。
婚姻や転籍、戸籍の制度変更などにより、古い情報が別の戸籍に残されていることがあるからです。
家系図の作成でよく使われる証明書は、次の3種類です。
| 種類 | 主な内容 | 標準的な交付手数料 |
|---|---|---|
| 戸籍謄本(全部事項証明書) | 現在の戸籍に記載されている人の情報 | 450円/通 |
| 除籍謄本 | 婚姻・死亡・転籍などにより全員が除かれた戸籍 | 750円/通 |
| 改製原戸籍謄本 | 戸籍の制度変更やコンピュータ化などで作り替えられる前の戸籍 | 750円/通 |
戸籍謄本だけでは見つからなかった情報が、除籍謄本や改製原戸籍に記録されている場合があります。
ただし、どの書類が必要かは、調べたい人物と年代によって異なります。

以前は、戸籍を取得するために、その戸籍が置かれている本籍地の市区町村へ請求する必要がありました。
しかし、2024年3月1日から「戸籍証明書等の広域交付制度」が始まりました。
この制度によって、条件を満たす人は、本籍地以外の市区町村の窓口でも戸籍証明書を取得できるようになっています。
例えば、現在は東京に住んでいるけれど、祖父母の本籍は別の県にあるという場合でも、対象となる戸籍であれば、近くの市区町村窓口でまとめて請求できることがあります。
ただし、利用には条件があります。
広域交付制度で対象となるのは、基本的に本人、配偶者、父母や祖父母などの直系尊属、子や孫などの直系卑属です。
一方、兄弟姉妹や叔父・叔母などの戸籍を、単に親族だからという理由だけで広域交付によって取得することはできません。
また、申請者本人が窓口へ行き、マイナンバーカードや運転免許証など、顔写真付きの本人確認書類を提示する必要があります。
広域交付では、郵送や代理人による請求はできません。
さらに、コンピュータ化されていない一部の古い戸籍などは、制度の対象外です。
その場合は、本籍地の自治体に直接請求する必要があります。
戸籍の本籍地は、現在住んでいる住所と同じとは限りません。
本籍地がわからない場合には、本籍が記載された住民票の写しを取得するなどして確認する方法があります。
請求の際には、必要な戸籍の範囲を自治体の窓口で相談するとよいでしょう。
例えば「家系図作成のため、父方の祖父母の親族関係を調べたい」と、調べる目的と人物を具体的に伝えると、必要な書類を整理しやすくなります。
ただし、取得できる範囲には法的な制限があるため、目的を伝えればどの親族の戸籍でも取得できるわけではありません。
詳しくは、法務省の戸籍制度に関する案内や、請求先の自治体の公式サイトを確認してください。
初めて古い戸籍を見ると、どこを読めばよいのかわからないことがあります。
特に、昔の戸籍は縦書きで記載されていたり、現在とは異なる漢字や家族の記載方法が使われていたりします。
一度にすべてを理解しようとすると、途中で混乱してしまうかもしれません。
そこで、最初は調べたい人物一人に絞って読む方法があります。
まず名前を確認する。
次に、その人物の父母の名前を探す。
出生や婚姻などの記録があれば、年月日を確認する。
そして、前の戸籍への手がかりになる記載がないかを調べる。
こうして少しずつたどっていきます。
例えば、祖父の父親の名前がわかったなら、その人についてさらに古い戸籍を確認できる可能性があります。
しかし、古い戸籍が廃棄されていたり、記録が残っていなかったりする場合もあります。
また、古い戸籍で使われている家制度上の関係と、現在の家族関係の捉え方は異なることがあります。
読めない部分や判断できない部分は、無理に解釈せず、不明として残しておく方が確実です。
ここで、初心者が見落としやすい大切なことがあります。
それは、戸籍で確認した事実と、家族から聞いた話を混ぜないことです。
例えば、親族から「祖父は若い頃、北海道に住んでいた」と聞いたとします。
しかし、その話が正確なのか、仕事で一時的に滞在していただけなのかは、まだわかりません。
その場合は、次のように整理します。
| 記入すること | 情報の出どころ |
|---|---|
| 祖父の氏名・生年月日 | 戸籍で確認 |
| 祖父が北海道で暮らしていたという話 | 親族からの聞き取り |
| 仕事のために移住した可能性 | 現時点の仮説 |
「確認できた事実」「人から聞いた話」「自分の推測」を分けておくと、後から見直したときに誤解が生じにくくなります。
家系図は、最初から完璧に仕上げなければならないものではありません。
新しい資料が見つかったら、情報を加える。
間違いが見つかったら、修正する。
そのように少しずつ更新していけばよいのです。
初心者が迷いやすいのが、手書きで作るか、パソコンで作るかということです。
どちらにもメリットがあります。
手書きの場合は、紙とペンだけで始められます。家族と一緒に見ながら名前を書き加えることもできます。
一方、親族の人数が増えると、スペースが足りなくなったり、修正するのが難しくなったりします。
パソコンなら、後から人物を追加したり、図全体を整理したりしやすくなります。
Word、Excel、PowerPointなど、使い慣れたソフトで作成することもできます。
どちらを選んでも構いませんが、最初は手書きで関係を整理し、ある程度情報が集まってからデジタル化する方法が取り組みやすいでしょう。
また、戸籍や家系図には、現在生きている家族の個人情報が含まれる場合があります。
オンラインの家系図サービスやAIに情報を入力する場合は、公開範囲やデータの取り扱いを確認し、本人の同意のない個人情報を不用意に公開しないようにしましょう。
家系図が完成すると、それまで知らなかった家族の歴史が見えてきます。
祖父は、自分が思っていたよりも若い頃に結婚していた。
祖母は、結婚前に別の地域で暮らしていた。
父親には、会ったことのない親族がいた。
そんな発見があるかもしれません。
では、家系図を作る意味は、先祖の名前を知ることだけなのでしょうか。
家族の歴史に興味を持った人の中には、そこからさらに、家族の生き方や関係性について考える人もいます。
祖父母は、どのような時代を生きてきたのだろう。
父親や母親は、どんな家庭で育ってきたのだろう。
なぜ自分の家族では、特定の人がいつも大きな責任を引き受けていたのだろう。
そうした疑問です。
ただし、家系図に名前や婚姻関係を書いただけでは、家族の気持ちや価値観までわかるわけではありません。
その部分を知るためには、家族の生活についての聞き取りや、さまざまな出来事を振り返ることが必要になります。
ここから先は、単なる家系図作成とは少し違う領域です。
家族の歴史から何を読み取れるのかを詳しく知りたい方は、関連記事の「家系図からわかること7選|性格ではなく『家族のパターン』が見えてくる」も参考にしてください。
また、結婚や夫婦関係に関する家族の共通点については、「家系図からわかる結婚で繰り返される5つのパターン」で詳しく解説しています。
家系図を完成させることと、その家族の歴史をどう理解するかということは、別の課題なのです。
最初は、自分と両親、祖父母の3世代について、名前と続柄を書き出すことから始めるとよいでしょう。家族への聞き取りや戸籍の取得は、わからない情報を整理してから進めても構いません。
目的によって異なります。先祖を深く調べたい場合は何世代もさかのぼることがありますが、初心者なら3世代から始めると取り組みやすくなります。家族関係を整理するジェノグラムでも、3世代以上を扱うことが一般的です。
紙とペンを使えば、費用をかけずに作成できます。無料で使えるソフトやテンプレートを利用する方法もあります。ただし、戸籍証明書の取得には、原則として所定の手数料がかかります。
必ずしも必要ではありません。家族から聞いた情報だけでも、基本的な家系図は作れます。ただし、氏名や婚姻関係などを正確に確認したい場合には、戸籍が役立つことがあります。
現在の戸籍から父母の情報を確認し、必要に応じて過去の戸籍を順に調べる方法があります。ただし、取得できる範囲や記録の保存状況によっては、さかのぼれない場合もあります。
作れます。わかっている親族情報から始め、必要に応じて法律上取得できる戸籍証明書を使う方法があります。関係が難しい親族に無理に連絡したり、過去を聞き出したりする必要はありません。
家系図だけで性格や運命を判断することはできません。ただし、家族の歴史や生活環境について情報を追加することで、自分が育った家庭や、親族が置かれてきた状況を理解する手がかりになります。
初めて家系図を作るとき、多くの人は先祖の名前を調べることから始めます。
祖父母の名前を書き、両親をつなぎ、自分へと線を引いていく。
たったそれだけの作業でも、今まで意識していなかった家族のつながりが、目に見える形になります。
そして調べていくうちに、名前しか知らなかった人にも、それぞれの人生があったことに気づくかもしれません。
生まれ育った土地を離れた人。
家業を継いだ人。
結婚を機に新しい生活を始めた人。
戦争や災害、社会の変化の中で、暮らしを立て直してきた人。
その一人ひとりの存在が、今の自分につながっています。
もちろん、家系図を完成させたからといって、先祖の思いや家族の歴史のすべてがわかるわけではありません。
記録が残っていない人もいるでしょう。
詳しい事情を知ることができない出来事もあるかもしれません。
しかし、すべてを知らなければ家系図を作る意味がない、ということではありません。
名前が一つわかった。
祖父母が暮らした場所を初めて知った。
親が子どもの頃に住んでいた家の話を聞けた。
そうした小さな発見を積み重ねていくだけでも、今までとは違う角度から家族を見ることができます。
だから、最初から立派な家系図を完成させようとする必要はありません。
まずは紙を一枚用意し、自分の名前を書いてみる。
そこから父親と母親へ、そして祖父母へと線をつないでみる。
家系図を作る第一歩は、遠い先祖を探すことではなく、今の自分が知っている家族のつながりを、一度目に見える形にしてみることです。
その小さな一枚から、これまで知らなかった家族の歴史が広がっていくかもしれません。
家系図は、家族のつながりを整理するための便利な資料です。
ただ、名前や続柄を調べるだけではわからないこともあります。
親子関係、夫婦関係、人間関係などで、なぜか似たような問題を繰り返してしまう。
その背景には、今の自分だけを見ていても気づきにくい、家族の中で身につけた価値観や関わり方が影響している場合があります。
家系心理学では、そうした繰り返しを「家系の脚本」という視点から考えます。
なお、家系心理学・家系療法のセッションでは、事前に家系図を用意する必要はありません。家系図作成とは異なる独自の方法で、家族の関係や人生のパターンを見つめ直していきます。
また、繰り返す人生パターンについて考えるための特別動画をご用意しています。
「繰り返す人生パターンの正体がわかる特別動画(ワーク付き)」
家族のつながりを知ることから、今の自分の生き方を考えることへ。
その一つのきっかけとしてご活用ください。
1.法務省「戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00082.html
2.横浜市「戸籍証明書の広域交付について」
3.文京区「戸籍の証明書に関する質問・回答」
https://www.city.bunkyo.lg.jp/b013/p000299.html
4.日本認定遺伝カウンセラー協会「家系図を書いてみよう!」
5.日本遺伝カウンセリング学会「初心者向け家系図作成体験学習ツール」
https://bestlab.jp/jsgc/2021/familytree.html
※医療用の家系図は、遺伝的リスクや家族歴を評価するための専門的な記録です。個人で作る一般的な家系図と目的や記載ルールが異なるため、医療的な評価には専門家による確認が必要です。